学部長からのメッセージ
「融合知」による持続可能な社会をめざして
総合理工学部長 亀井淳志
島根県は日本神話や八百万(やおよろず)の神々と深く結びついた歴史ある聖地として知られています。島根大学は、この豊かな伝統・文化や自然環境に恵まれた国立大学です。
現在、地球温暖化や生物多様性の喪失など、人間活動が地球の限界(planetary boundary)を超え、持続可能な社会づくりが急務となっています。日本では高齢化や人口減少が進み、エネルギー効率の悪化やインフラの非効率化が問題視され、コンパクトシティが注目されています。一方で、地方には、水や森林など人間の存続に不可欠な資源があり、人が住み続けることで環境を守ることが社会の存続に重要とも言われています。島根をはじめとする地方は、これらの課題の最前線であり、それぞれの解決が持続可能な社会への貢献に繋がると言えます。総合理工学部では、理工学の視点と地域の特性を活かし、特に「ものづくり」「数理・IT・デジタル」「自然環境・住環境」に着目して、さまざまな課題解決に取り組んでいます。
総合理工学部は、物理工学、物質化学、地球科学、数理科学、知能情報デザイン学、機械・電気電子工学、建築デザイン学の7つの専門領域を擁しています。それぞれの領域では理学と工学の視点を融合させた学際的な教育・研究を実践し、この理念のもと「総合理工」の名を冠して、20年以上の歴史と伝統を築いてきました。
そして今、この伝統をさらに発展させ、新たな知の創造を目指す「融合知」を提唱し、これを具現化する新しい1学科制教育をスタートしました。初年次では理工共通の基礎科目を幅広く学び、2年次からは「ものづくり」「数理・IT・デジタル」「自然環境・住環境」の3分野のいずれかを選択して専門的な学びへと進みます。
ただし、学びの枠に制限はありません。7つの専門領域が提供する多彩な授業をもとに構成された、14の魅力的な「標準履修モデル」が用意されており、学生はそれらを基軸に、あるいは参考にしながら、自らの興味や将来像に応じて、全分野から必要な授業を選択し、「オンリーワン・カリキュラム」を設計することができます。
このカリキュラムでは、理学と工学を融合させた幅広い視野で新たな領域を切り拓くことも、あるいは特定の専門分野を徹底的に深堀りすることも可能です。入学生には、将来の自己実現に向けた「体系的な学び」を主体的に設計し、卒業研究に挑むことで、未来を切り拓くための発想力や実行力を獲得できるチャンスが与えられます。皆さんのひらめきと努力が、持続可能な社会の実現に向けた確かな歩みとなることでしょう。